最新戦略報告 2025年4月2日

GCAPへの動き

1. カナダとオーストラリアのGCAP参加動向

カナダとオーストラリアがGCAP(Global Combat Air Programme)三角同盟へ向け動き始めた。米主導秩序に新たな波紋が広がりつつある。英国の軍事戦略アナリスト、ニコラス・ドラモンド氏が2025年4月2日に報じたところによれば、カナダとオーストラリアが日英共同の第6世代戦闘機開発計画GCAPへの参加に向け着実に動き始めているという。表向きにはまだ協議段階との予想を保っているが、関係者の証言、国会報告、首脳発言、そして防衛戦略の再検討方針が、参加は現実的な路線として検討されていることを裏付けている。

2. ファイブ・アイズ同盟内の信頼危機

これは「ファイブ・アイズ」と呼ばれた米英加豪NZの英語圏国家による世界最大の情報共有同盟の中で、米国に対する信頼がきしみ始めた証左と言える。カナダではトランプ政権が再び発動した関税攻撃が引き金となった。2025年3月、国家安全保障と麻薬密輸のリスクを名目に、トランプ大統領はカナダからの輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名。そのわずか数日後、「カナダはもはや外国ではない、50番目の州だ」とする発言が国内外で炎上し、オタワは衝撃的な決断を迫られることになった。

カナダの対応

3. カナダのF-35計画見直し

カナダのカーニー首相は即座にF-35A導入計画(88機・190億カドル規模)の見直しを指示し、スウェーデン、フランス、さらには英国との防衛協議を水面下で開始した模様。現在、カナダ国防省は米国主導の装備体系から距離を取ることが戦略的自立の第一歩だと認識している。そしてその候補に浮上したのが、日英主導の第6世代機計画GCAPだ。

4. GCAPの技術的特徴

GCAPの参加国はすでに高度なAI、ステルス技術、有人無人チーム戦術を組み込んだ新型戦闘機の共同開発に取り組んでおり、F-35とは一線を画す独自の哲学と設計思想が存在する。英国議会ではカナダへの招待可能性について質問が出され、英国国防省は「他国の協力は否定しない」と前向きな姿勢を示した。これはカナダの「ファイブ・アイズ」としての信用力と英国との深い防衛関係に裏打ちされたものであり、正式な三角同盟が実現すればGCAPの北米側における展開が現実のものとなる。

オーストラリアの動向

5. オーストラリアの慎重な姿勢

一方のオーストラリアはより戦略的に慎重ながらも、着実に米国との依存関係を再評価する局面に入っている。キャンベラの国防省において、空軍副元帥ニコラス・ホーガンが日英の代表団からGCAPの戦術構想と技術概要について詳細なブリーフィングを受けたことが報じられた。この会談は単なる好奇心の範囲を超えており、国際共同作戦における運用可能性という具体的目標に照準を合わせて行われたという。

6. オーストラリアの米国への不信感

オーストラリアは米国が提供する安全保障の傘に依存しながらも、その見返りとなる装備や協力の不確実性に苛立ちを募らせている。米国が主導するNGAD(次世代航空優勢)計画やF-47の輸出制限方針に対して、オーストラリア国内では「米国が常に信頼できるとは限らない」という不安が高まっており、豪国防省はF-35A以降の次世代戦闘機としてGCAPを実質的な選択肢として評価し始めたようだ。

同盟関係の変化

7. ファイブ・アイズ内部の亀裂

両国の共通点は明白だ。米国による同盟管理の不透明さ、外交貿易政策の一貫性の欠如、防衛装備供給の制約——それらがかつて「絶対の信頼」とされたファイブ・アイズ内部で確かな不信の楔となって浮かび上がってきている。

8. GCAP参加の戦略的意味

カナダとオーストラリアの動きがGCAPにとって何を意味するか。日英が主導する独自技術圏に、ファイブ・アイズからの「脱米」パートナーが加わるという意味であり、それは米国主導の戦闘機体系への静かな訣別でもある。ドラモンド氏の報告が「囁き」として始まったとしても、その囁きは遠からず航空戦略の新しい座標軸を告げる銃声となるかもしれない。

米国の防衛政策

9. 新たな動向の兆し

GCAPの空に招かれようとする次なる国々が静かに姿を表し始めている。アメリカ合衆国による防衛装備政策の迷走と、同盟国による米国依存からの離脱の動きは、NGAD(Next Generation Air Dominance)とF-47——米国が現在主導する第6世代有人戦闘機開発計画からも感じ取れる。米国の神話は崩れ始めている。

10. NGADとF-47の開発状況

NGADはすでに2機のプロトタイプが飛行済みとされ、F-22後継として極限までのステルス性、高機動、高速通信、AI融合を目指す。F-47は空軍版のNGAD機に相当し、空中優勢の中核として2027年から2030年代初頭に運用予定とされるが、その開発情報の非公開性と輸出制限が最大の障壁となっている。

輸出制限の問題

11. 米国の輸出政策

トランプ政権下の国防長官ピート・ヘスはF-47の輸出について、「ロシア型輸出モデル——つまりトーンダウンされた仕様での限定的販売はあり得るが、極めて制限され厳重に監視されるだろう」と述べている。つまりF-47もNGADも同盟国に完全な形で提供されることはないということだ。

12. GCAPの共同開発アプローチ

対照的にGCAPは、日英伊という対等な3カ国協定に基づき、開発の初期段階から共同設計と技術共有が行われている。技術的にはF-47/NGADに匹敵もしくは凌駕する可能性がある。機体サイズはユーロファイターより30%大型化し、航続距離と兵装搭載量が増加。日本を中心としたインド太平洋の長距離作戦構想にも対応する設計となっている。

GCAPの優位性

13. 能動的な参加国の関与

何よりの強みは、供与される機体への関与が許されるという3カ国の能動性だ。この点でGCAPはF-35のような米主導の「受動型」開発を超え、共同所有の「空の資産」を作ることを狙っている。この思想はアジア太平洋において具現化しつつある——すでに日本はGCAPとは別に、インドへの技術共有と防衛協力を模索中であり、オーストラリアとは「AUKUS」とは異なる次元で装備協力を追求している。

14. アジア太平洋地域の新たな同盟構想

仮にカナダとオーストラリアが正式に参画すれば、アジア太平洋地域で米国不在の軍事的中核軸が成立する。この構造が生み出すのは西太平洋における第2の航空同盟であり、米国の覇権と並行して日英豪による独自の連携圏——「インド太平洋版NATO」構想化だ。これは米国の影響力が相対的に低下した場合の保険ではなく、多極化を想定した軍事的選択肢となる。

参加の現実性

15. カナダとオーストラリアの参加可能性

ではカナダとオーストラリアのGCAP参加は本当に実現するのか?結論から言えば十分に現実的であり、各々が戦略的合理性を伴っている。カナダは既にF-35契約の見直しに着手し、英国議会では参加の可否が議論される段階に入っている。オーストラリアはブリーフィングを受け、豪空軍が戦力投資計画の中でF-35以降の選択肢を模索中だ。両国とも技術力、運用能力、防衛予算ともにGCAP参加国としての資格を十分に備えている。

16. 最大の障壁

最大の障壁は政治的タイミングと米国からの牽制だろう。しかし米国が防衛装備を「選ばせるもの」から「制限するもの」へと変質させる限り、カナダとオーストラリアは「選ぶ自由」を求めて米国の外へと歩み出す可能性が高い。GCAPが単なる戦闘機計画ではなく、「空における技術と信頼の新たな同盟線」であるという事実がいよいよ顕在化してきた。

GCAPの主導権

17. 日本の主導権堅持

この流れの先で日英が誰を迎え、誰を拒むか——米国のような「トーンダウンされた仕様での限定的販売」はしないにしても、明確な留意点として、日本はGCAPの主導権を堅持する姿勢だ。カナダとオーストラリアが仮にこの時点でGCAPに参画するとすれば、彼らの立場が日英伊と並ぶことはありえない。

18. プロジェクトの根幹構造

プロジェクトの根幹構造において、すでに主導国が明確に定められており、開発の根本的な哲学、方向性、使用策定の大部分が合意・実行に移っている段階だ。2023年に三国間の正式条約が締結され、国際共同開発機関が設立されて以降、三国はすでに設計思想、エンジン構造、兵装搭載方式、ステルス要件、センサーAI統合技術といった中核要素について合意形成を済ませている。今から加わるものは、それらを再交渉する余地は持たない——与えられた枠組に従うか、拒否するか、それだけだ。

新規参加国の立場

19. 新規参加国の限界

つまりカナダもオーストラリアも、たとえ技術力を有し防衛産業の基盤が整っていたとしても、GCAPにおいてはすでに進行している秩序の外側にいる存在でしかない。そしてその秩序は「共同開発」という名の下に、実質的な主導権を厳密にコントロールする構造の中に築かれている。

20. 提供可能なリソース

彼らが提供できるのは資金、市場、あるいは運用ノウハウの一部に過ぎず、GCAPのコアテクノロジーにアクセスするには段階的な制限と政治的承認が必要となる。このような構造では、「三角同盟」と言ってもそれは本質的には従属的協力関係に他ならない——名義上のパートナーであっても、実際には三国の決定権の外に位置する、いわば「戦略的周辺国」だ。

F-35との比較

21. F-35プロジェクトの教訓

F-35における米国と同盟国の関係を想起すれば分かりやすい。ロッキード・マーティン主導の計画において、英国ですら制限付きのアクセスであり、他の国々は単なる購入者もしくは部分的なサプライヤーに過ぎなかった。GCAPはそれよりもさらに排他的に設計されている——三国の開発主導権は譲渡不能であり、遅れてやってきたものが「並び立つ」ことは開発哲学の崩壊を意味する。

22. GCAPの本質

GCAPは均質な国際開発コンソーシアムではない。参画するものは与えられた席に座る——椅子を選ぶことはできない。それが現代における大国間軍事開発の現実であり、そしてルールだ。サウジアラビアやインドも動いている——これからGCAPの「椅子」に座りにくる国々のフェーズが見える。だがこれは三国が自国の空戦支配権を未来に継承するために築いた、閉じられた戦略同盟であることを示していてほしい。

結論

23. 戦略分析室の報告締め

以上、戦略分析室より定期報告を終わります。皆と情報を共有できることに感謝し、そして未来への戦略を共にできることを誇りに思います。戦略対応、精々見せましょう。